| タイトル | DVD能楽囃子「大和秦曲抄2」五体風姿 |
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| サブタイトル | 五体風姿 |
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| 編著者 | 総合制作:大倉源次郎/ 制作監修:關 基久/ライナーノーツ:内田 樹 | |
| 出版社 | 檜書店 | |
| 価格 | 4,200円(税込) | |
| 判型 | DVD | |
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| 発売日 | 2010-09-05 | |
| 在庫 | 有り | |
| 注文コード | 82791201 |
観世流 舞囃子 「高砂」
シテ/観世銕之丞 笛/藤田六郎兵衛 小鼓/大倉源次郎 大鼓/安福光雄 太鼓/観世元伯 地謡/観世清和、関根祥人、上田公威、長山桂三、安藤貴康
13分47秒
金春流 小鼓一調 「八島」
謡/櫻間右陣 小鼓/荒木賀光
3分39秒
喜多流 舞囃子 「羽衣」
シテ/粟谷明生 笛/松田弘之 小鼓/大倉源次郎 大鼓/山本孝 太鼓/金春國和 地謡/長島茂、狩野了一、内田成信、大島輝久
23分17秒
金剛流 大鼓一調 「天鼓」
謡/金剛永謹 大鼓/山本孝
4分13秒
宝生流 舞囃子 「乱」
シテ/近藤乾之助 笛/一噌仙幸 小鼓/大倉源次郎 大鼓/亀井忠雄 太鼓/金春國和 地謡/朝倉俊樹、金井雄資、辰巳満次郎、金井賢郎、朝倉大輔
22分56秒
一噌流 笛一管 「恋之音取」
笛/一噌仙幸
7分11秒
金剛流 小鼓一調 「夜討曽我」
謡/金剛永謹 小鼓/大倉源次郎
6分55秒
観世流 大鼓一調 「女郎花」
謡/観世清和 大鼓/亀井忠雄
6分16秒
金春流 太鼓一調 「葛城」
謡/櫻間右陣 太鼓/金春國和
6分35秒
特徴は、演目全般に日本語、英語、中国語の字幕、解説冊子付であることである。2001年、世界無形文化遺産に指定されている能楽を世界に発信しようとする意欲が伝わってくる作品である。舞囃子を含め、撮影アングルが斬新であることは注目に値する。見所から見ることの出来ないシテ、地謡方、囃子方の姿を揚幕、鏡板の真後、ワキ柱から撮影するアングルは、基本姿勢で演じる演者たちの精神的内面を映し出し、演者の一体感、日本人の精神的支柱の一つである表裏一体となった和の精神を醸し出す。階から見上げるシテの表情と所作は迫力もある。これは制作者である大倉源次郎の意図、つまり演者の作品に対する感性、その精神的内面と所作の合致こそ様式美の極致であるという姿勢が伝わってくる。能楽の一分野である舞囃子、特に小鼓一調、大鼓一調、太鼓一調、笛一管と最も能楽師の器量、技量を求められる素材を「五体風姿」とし、まとめたこのDVDは新たに能楽愛好者の刺激を与え、又能楽を通し、幽玄美という精神的普遍性を認識させるものである。能楽の国際社会への発信を演能とその幽玄美を英語による解説に終わり、純粋培養の伝統芸能の継承という狭い視野でなく、国際連合の公用語である英語で伝統的能楽手法による能楽創作をするという取り組みも必要であろう。それを実践するTheater Nogakuの取り組みも日本能楽界の発展には必要であると感じさせる。国際的視野に立つ総合制作者大倉源次郎の今後の活躍に期待したい。
この度制作されたDVD「大和秦曲抄Ⅱ<五体風姿>」は、多面的で重層的な、極めて魅力的な能楽空間を創り出している。観る者を惹きつけてやまないその魅力を、まずもって列挙してみよう。
舞囃子二番と鼓・小鼓・太鼓それぞれの一調(計五番)、そして一管(一番)での構成。それは、能楽の骨格をなす音楽性を、鮮やかに際立たせる。日頃の公演で、あまり多く観ることが叶わないこれらの演目を、充分に堪能できることは願ってもない機会なのだ。
しかも、演者は各流の重鎮たち。例えば舞囃子の「乱」は、シテを近藤乾之助、大鼓を亀井忠雄、小鼓を大倉源次郎、笛を一噌仙幸、太鼓を金春國和という豪華な顔ぶれ。実際の舞台公演では望むべくもない、最高のラインアップだろう。
極めて濃密な、至福の103分間。
それを心地よい緊張感で満たしているのが、カメラワークの斬新さなのだ。正面および脇正面からの遠景は言うに及ばず、舞台間近から見上げるアングル、クローズアップなどが多用される。さらに驚くべきは、あり得ない位置からの視点が存在すること。そのアングルは、地謡座の背後から。橋掛りのアイが控える位置から。さらには、鏡板に接する舞台の床面からと、極めて新鮮な光景を出現させる。
そんな視点から捉えられた、忘れがたい瞬間がある。いわく、人間を超えて猩々そのものとなって舞う、近藤乾之助の存在感。背後の低い位置から望む、亀井忠雄の気迫に満ちた居住まい。この度は舞ではなく一調で登場する、金剛永謹の悠揚迫らざる風情。ただひとり舞台にあって、恋慕の情を奏する一噌仙幸の深み。大倉源次郎の怜悧な風貌と明快な音色。等々、枚挙に暇はない。
<音楽としての能>を、最高の内容と充実度で提示したこのDVDは、能楽愛好家に、出会えた悦びをもたらして余りある。しかしこれは本来、もっと豊かな広がりを持って存在している。それは字幕に端的にうかがえる。日本語の他に、英語・中国語の字幕が付されることで、ほぼ全世界の人々への、六百年の伝統を持つ音楽劇、世界文化遺産としての能楽の啓蒙が可能となる。
のみならず日本にあっては、世代を超えた能楽の伝承のために、有効に機能するだろう。単に映像と音響での記録ということではない。英語の字幕が、若い人たちの詞章の理解への大きな助けとなるだろう。古い日本語ゆえの理解の困難さは、英訳されたシンプルな表現で、一挙に把握されるのだ。
こんなことを夢想する。このDVDが学校の教材として、広く若い人たちの耳目に触れるとしよう。多少とも音楽のセンスのある人は皆、その関心が例えクラシックに向かうにせよ、ジャズ、あるいはロック、ダンスミュージックなどにあるにせよ、能の持つ音楽としての側面、とりわけその打楽器が創り出すリズムに、強い感銘を受けるだろう。
髪を金色に染め、耳にピアスをした少年たちが、<この音楽なんかすごくない?俺、鳥肌立ってきちゃうよ>などと、興奮気味に話している光景がもし出現するならば、それは何と痛快なことだろう。
能の音楽性に焦点を当てること。それは、人々と能楽との間の垣根を、確実に低くする。このDVDを介してならば、多くの人々と能楽とが、<幸福な出会い>を果たせるのではないだろうか。「大和秦曲抄Ⅱ<五体風姿>」にかける期待は、いやが上にも高まるのだ。
最後に、今後このような企画が続くうえで、どうしても望みたいことが、ひとつある。今回登場する四拍子のうち、どの舞台にも必須の三拍子について見れば、笛が一噌・森田の二流、大鼓が大倉・葛野の二流(四拍子の場合は、金春の太鼓が加わる)参加している。ところが小鼓は、企画者の大倉源次郎率いる大倉流ただひとつのみ。ここに物足りなさを感じるのは、私ひとりではないはずだ。他流の小鼓も、ぜひ聴いてみたいという率直な感想は、広く共有され得るだろう。
(文中の敬称は略す)