商品詳細

横道萬里雄の能楽講義ノート〈囃子編〉

囃子編 CD2枚付

著者/出演者 「横道萬里雄の能楽講義ノート」出版委員会(編)
出版 檜書店
判型 A5
ページ数 270
在庫 有り
価格 4,104円(本体3,800円 + 消費税304円)

物販商品

商品説明

横道先生の能楽講義第2弾!

東京藝術大学での講義に基づいて編集された「謡編」に続く「囃子編」。
実演部分をあらたに収録し、囃子のしくみを解き明かす。

前編『能楽講義ノート〈謡編〉』はこちら

レビュー

横道萬里雄先生は、戦後の能楽研究における第一人者として業績を残され、2012年に92歳でお亡くなりになられた。

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一昨年、ひのき能楽ライブラリーの1冊として『横道萬里雄の能楽講義ノート【謡編】CD付』(「横道萬里雄の能楽講義ノート」出版委員会編 檜書店 2013年)が出版され、たいへん驚いた。昭和58年、東京芸術大学での能楽概論の講義が、本になるという画期的な企画で、しかも講義の肉声を記録したCDが付いているというものだったからである。能楽に興味を持ち始めて6年目の、もう少し能のことを知りたいと思っていた私にとって、まさに垂涎の本だった。

その末尾に、「これで謡の概説を終わります。続編で謡と囃子の関係や囃子事の話をいたします。」とあったので、続編の出版を、非常に楽しみにしていた。

その待望の囃子編が、昨年末に刊行された。『横道萬里雄の能楽講義ノート【囃子編】CD付』だ。今回の囃子編は、謡編よりもページ数も多く、実演入りCDも2枚付いて、ボリューム満点である。

2冊の本に共通して言えることであるが、内容は高度である。長年、謡や囃子を習っていない限り、一読しただけでは、難しすぎて理解できないかもしれない。大学での講義であるので、当然であろう。純粋な学術書であるのだ。しかし、二度三度とくり返して読み、CDを拝聴すると、能の囃子が、謡とともに、いかに理論的に成り立っているものなのかを、知ることができる。別々に読むよりも、謡編、囃子編と続けて読むことをおすすめする。

この2冊の本は、先生が後学のために遺してくださった最高の贈物となったのではないか。欲をいえば、この講義ノートを、さらにかみくだいて、一般の読者に向けた入門編も作っていただきたかった。

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(山田 ちさ子 様)

ほとんどのページは手組や唱歌の細かい説明にあふれているので、読み易い本ではありません。

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しかし例えば「第十三講 大小物の囃子」で手組の機能を分類したあとに「手を打ったことでお客さんがハッと心が揺らめかなければ、打つ意味がありません」と明快に放つひとことに接すると、こちらもハッとします。それを聴いた学生達の心もハッと揺らめいただろう、そんな当時の教室の空気まで伝わってきます。情緒や印象に頼らず、即物的な分析をかさねて初めて明らかになるお能の魅力。それを示してくれる講義に学生達はしびれたことでしょう。

以前に横道先生(と呼ばせて頂きます)の書かれた地拍子の解説書を読んで、偶数拍と奇数拍の役割をていねいに特徴づけることで謡の独特のリズム感を解明されたくだりに目の覚める思いをしたことがありました。この本にも、同じ愉しみがあります。 

私は会社員で、笛と小鼓を習っています。この一冊を私のように、お能は好きだけれどお謡・四拍子ぜんぶ稽古する余裕はない素人の方に、とくにお薦めしたいと思います。もちろん稽古の代わりにはなりませんが、第十五講から第十八講の囃子事についての解説は、いつもお稽古をつけて頂きながら「木を見て森を見ず」の思いを拭えない私自身にとって有難いものでした。

序ノ舞は笛では早い時期に稽古しますが、小鼓ではずっと進んでからになります。そんな時間のずれも、「並ノ舞の序」の解説の俯瞰的な視点が補ってくれそうです。乱序や置鼓といった、なかなか稽古する機会の少ない曲の構造が譜面と共に記載されているのも貴重です。また舞事の稽古をしていて笛の唱歌になじむのが大変、そんなひとの独習にも役立つでしょう。

ことに第十七講にある、乱拍子の稽古の昔と今についての一文は面白く感じました。おりおり《道成寺》の舞台をみて受ける印象と思い合わせて納得がいき、先生の肉声も聴こえてくるようでした。

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(石井 浩 様)
囃子事の体系化への挑戦

本書はいくつかの意味で画期的である。

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まず、囃子事をテーマとしている点が画期的である。従来、能楽の音楽性についての分析は謡に重きが置かれてきた。横道氏による「謡リズムの構造と実技」や三宅秔一「節の精解」「拍子精解」(いずれも檜書店刊)等、謡に関する理論的分析はいくつも出版されてきたが、囃子事については本書あとがきでも触れられている「幸流小鼓正譜・序巻ノ上」における横道氏の解説等、限られたものにとどまり、纏めて公にされることはなかった。

さらに、本書の分析が体系化を志向している点も画期的である。囃子事は即興性が強いものであり、歴史的には演者の意図により変容してきた。もし安易な体系化によって固定化され、囃子事のもつ即興性に対する視座を欠いてしまえば、もはやそれは囃子事ではない。本書では、容易に体系化を受け付けない囃子事について、生物との類似性を念頭に、「囃子事は種である」と観念し、種の考え方を用いて分類・整理している。この本書のアプローチは、あとがきにおいて「独特の手法」とされているが、まさに学術的見地からみても特徴的である。

そのような画期的な本書を刊行するに当たり、出版委員会の工夫が随所にみられることも本書の魅力を増している。まず、付属の講義・実演録音については、本書の基礎となった講義の臨場感を伝えるとともに、読者の耳による理解を促している。また、講義の本線からの逸脱部分について、コラムとして余すことなく収録している点も高く評価できる。コラムには十分な知識を持った読者にも斬新と思われるような、相当に高度なことが書かれており、後世に遺す価値がある内容が多く含まれている。

横道氏が行ってきた理論的分析のうち、囃子事に関する部分がこのようなかたちで一般に公にされたことは、体系的な能の理解に資するところ大であり、囃子事に関する今後の一層の理解に繋がることと固く信じている。

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(ようぞ 様)