商品詳細

横道萬里雄の能楽講義ノート〈謡編〉

謡編 CD付

著者/出演者 『横道萬里雄の能楽講義ノート』出版委員会(編)
出版 檜書店
判型 A5
ページ数 192
収録時間 60分
在庫 有り
価格 3,564円(本体3,300円 + 消費税264円)

物販商品

商品説明

大好評につき増刷いたしました。


能楽研究の第一人者、横道真理雄氏の講義が書籍化!

横道萬里雄氏が東京藝術大学教授在任中に行なった講義の録音テープに基づいて編集作成。能の実演を交えながらわかりやすく説明し、具体的な用例と比喩、能以外の芸能まで話題が広がったユニークな講義。
豊富な図版資料と、当時の講義(実演・解説部分)を収録したCD(約60分)で、能の音楽技法を目と耳から理解できる一冊。



続編『能楽講義ノート〈囃子編〉』はこちら

レビュー

能の音楽構造の重要性を再確認    ――「横道萬里雄の能楽講義ノート・謡編」を読んで――

 能楽研究、とりわけその音楽構造についての体系的研究の第一人者といわれた著者の講義が書物とCDの形で「復原」され、容易に接することができるようになったのは、たいへん喜ばしい。これは著者の東京芸大での最後の講義だったそうだが、昨年逝去されたのを機にあらためて編まれたという。

続きを読む

この「ノート」は、とりわけ、日ごろ謡曲・仕舞の稽古に精を出している人びと―初級・中級・上級のどのクラスでも―にきわめて有力な参考書になると思われる。通常、稽古は能楽師の先生について行うのだが、稽古は「実践」のくり返しが主体である。つまり謡い込みや舞い込みを通じて、能楽の「理論」を身体に染み込ませていく。記号の意味や地拍子(リズム)を含む謡い方などの理論面については、多くの時間を割いて説明されることは少ない。本書は、そうした稽古の実際を理論面からきちんと補ってくれる。初級者は「基礎理論」の理解を深められ、中級者は日ごろの鍛錬の復習と再確認に役立ち、上級者には「地拍子」のことに打楽器との関係における謡の深化に大いに寄与するにちがいない。

 さらに、本講義の有意なところは、謡い方や記号の表記法などについて能楽各流派間の相違を丁寧に説明しているところである。つまり、どの流派に馴染んでいても、能の音楽構造の理論を広く共有できるのである。

 もうひとつ、本「講義」の特色は、付録のCDによって活字のみでは理解の難しい「謡い」の諸相が著者や能楽師の音声によって実際に「耳」で聴き取ることができ、講義の内容がより解りやすくなっているところである。本講義はもともと学部学生向けの「概論」だったので、「能楽略史」や「能の役柄」といった基礎的教養から始まっているが、著者の得意とする音楽構造の解説に最も力が注がれている。「ヨワ吟・ツヨ吟」「吟型・ノリ型」(楽型)「打楽器の拍子型」「回シと増シブシ」など、私たちが日ごろ馴染んでいる能の基本的な表現・構造・謡い方について詳細な解説がなされていて、あらためて能の音楽構造の基軸の重要性を再確認させてくれた。また、6、7、8の三つの「講」にわたって詳述された「地拍子」については、謡いの「リズム」の構造的特徴を理解するのに大いに役立った。概論の内容としては高度すぎると思われるが、長年の著者の研究成果が最後の講義ということもあって披露されたというところだろうか。

 最後に、本講義をこのような形で編纂された関係者の皆さんに敬意を表したい。舞台芸術も講義も音声に依拠した「一回性」の表現体である。表現されたその場で消えゆく宿命にある。著者が教室で説明をしている黒板での板書の音を付録CDの随所に聴きながら、「音声表現体」を文字化することのたいへんさを思った。

貴重な講義が「能楽ライブラリー」に加わったことの意義は大きい。

閉じる

(翰慈童 様)
『横道萬里雄の能楽講義ノート謡編』

 私は現在、謡を習い始めて五年目、仕舞は丸三年と、能に関してまだ初学者の身である。その私にとってこの本は、日本の貴重な伝統芸能としての能の、奥深い歴史やその構造、また、実際の謡い方の技法分析など、太鼓や小太鼓、笛などの音楽面も含めて、わかりやすく、しかも含蓄深く教授してくれる、まさに謡を極めるための「必携─謡への道案内ハンドブック」になりそうである。と同時に、能の世界をさらに奥へと探究していきたくなる興味を、熱く湧かせてくれた。また、講義の実際が録音された付属のCDが、横道氏の人間性を彷彿とさせる楽しさもプラスしてくれ、出版委員会の配慮と意気込みと熱意が、十二分に伺えた。

続きを読む

 私の場合、毎月二回乃至三回のペースで、観世流シテ方の師に稽古をつけていただいている。明快に、しかも丁寧に教授してくださる師に巡り合えているが、この本で改めて技法の構造を示していただくと、なるほどそうだったのかと改めて納得し、曖昧だった点を修正し明確化できた感がある。「能の音楽構造概観」では、日本の音楽は論理的であり、その論理的な組み立てを的確に把握していくことで理解が深まることが、実際の稽古の場面と照らし合わせることで身をもって体感できた。また、ツヨ吟とヨワ吟の違いなどが体系化されているおかげで、場面場面での謡い分けや用いられ方などが理解できたし、男女を表現し分ける手段としてツヨ吟とヨワ吟のナビキを利用するという能の演劇性が、非常に興味深く感じられた。

 三か月に一度、楽しみにして通っている定期能会で能を鑑賞する際、シテ方、ワキ方といった役柄に関して詳しく知りたいと常々感じていたが、その違いや緻密な役籍などに関して丁寧に解説してあり、今後鑑賞に出かける際ごとに熟読していけば、面白さも楽しさも倍増しそうだ。未熟者ゆえ、まだまだ十分理解できない点も多いが、常に手許に置いて成長に合わせて読みこなしていくことで、自分自身を高めていけそうな期待感を抱かせてくれる、珠玉の一冊である。  

閉じる

(しらゆき ひめこ 様)
碩学に、親しく学ぶ喜び-横道萬里雄の能楽講義ノート<謡編>を読む

 2012年6月に95歳で亡くなられた、能楽研究の第一人者である横道萬里雄氏の、東京藝術大学での講義の記録である本書は、測り知れない魅力をたたえて燦然と輝いている。その最大の魅力は何と言っても、横道氏が直々に語る講義の奥行の深い内容と、その講義の実際を収録した音源が共に存在すること。その講義は1983(昭和58)年。それは横道氏の藝大での最後の講義の年だった。    

続きを読む

 能楽解説者としても親しい高桑いづみ氏は当時、藝大の学生であり、横道氏のこの講義を受講した。横道氏の授業は、豊かな深い知識に基づいて縦横に展開し、しばしば自ら実演して教える場面もあって内容は多岐にわたり、数多くの自作の資料と豊富な板書を伴うことを常としていた。高桑氏は、実技のレッスン優先のため受講できない友人のために、ノートと資料を超えた授業の豊かさを伝えるため、横道氏の許可を得て授業を録音した。それらの記録の集大成として編集された本書は、そのスタートとしての一冊なのである。

 <謡編>である本書は、A5版189ページ。コンパクトとさえ言える体裁である。内容は第一講から第八講までの8章からなる。第一・第二講の、能楽概論の部分を除けば、6章分が能の音楽構造に関する講義。具体的には、ヨワ吟とツヨ吟、そして地拍子の解説に充てられている。音楽構造すなわち音楽理論の講義と言えば、かつて辟易とした文法の授業のように、ともすれば無味乾燥となるであろうことは、想像に難くない。その困難さを横道氏は、工夫をこらした豊富な資料と、自らが実演して見せることで軽々と乗り超え、生き生きと血の通った、魅力的な学びの場を創出した。

 掲載された資料は、実に68点。付属CDの音声記録は、42トラック全59分におよぶ。資料の中には、例えばツヨ吟の<下ゲ歌>・<上ゲ歌>の謡い方について。謡本とともに、音の高低とその移行の仕方を解りやすく図示した資料によって、一目で解る工夫されている。加えて本格的に鍛えられた謡の声で、自らが実際に謡って理解を確実なものとしている。

 資料を見、音源を聴きながら読み進むうちに、音楽としての能楽の特性を、何とかして伝えようとする、横道氏の情熱が真っ直ぐに伝わって来て、胸が熱くなる。こんなにも情熱的、精力的に講義を行なう横道氏はまた、ユーモアの人でもある。資料の中には、地拍子の拍の強弱について、わざわざそれを打つ手のイラストを連ねて示したものがあったり、語りが聴く者の笑いを誘う場面もあって、微笑ましい。

 横道氏は名前の通り、話題がすぐに横道に逸れる人?なのだという。それだけ豊かな知識を広大な地盤として、通流派的な視点から音楽理論を展開する本書は、決して堅苦しいものではない。その証拠に、第1ページめ<横道萬里雄の能楽講義ノート>と記されたそのすぐ下には、横道氏自らが描いたであろう、ニコニコ顔の自画像が、ちょこんと添えられている。<ようこそ、学びの場へ>と声をかけてくれるかのように…。

 そんな横道氏の大きく豊かなキャラクターを、細大漏らさず掬い取って行こうとする、編者の「横道萬里雄の能楽講義ノート」出版委員会の、努力がいかに大変なものであったか、察して余りある。委員会はなお、囃子と謡、囃子事について述べた続編の刊行も予定しているという。期待が膨らむ。

 世界文化遺産<能楽>に、縁あって親しむこととなった私たちが、ほんの僅かではあっても、<能楽>を支えていけるとしたら…、それはまずもって碩学に深く学ぶことから始まるのではないか。そして日々の稽古と自らのパフォーマンスを、より奥行のあるものへと…。

閉じる

(阿部 未知世 様)

関連動画

能楽講義ノート【謡編】付属CD サンプル音源