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室町時代から日本人が親しんでいた芸能を、平成の人たちにも楽しめるように手引きしている本の一つ。実際に能楽堂へスムーズに足を運ぶためのエスカレーターだ。
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まんがは少し砕けすぎていて狂言のイメージするものと異なるところがあるように思えるが、一つの狂言に対する解釈は一つではなくてよいと思う。まんがを読み、あらすじをつかんだ上で観ると、さらに豊に作品を楽しむ事ができると思う。
600年以上も昔の人と現代の私たちが共有することのできる狂言の笑い。飽きられず、忘れられず、様々な時代を生き残ってきた古典芸能は日本人の誇りである。狂言の笑いとはどのようなものなのか。生活様式も文化も変化しているのになぜ楽しめるのか。どのような話なのか。まんがを読むとざっとストーリーや背景が容易につかめて微笑める。人間の本質は時代を超えても変わらないから笑いに共感できる。狂言の中での謡が謡曲の何の作品の中にあるか言及していたり、歴史的背景を知る事ができたり、狂言フアンだけでなく幅広く興味をそそる箇所がある。
能狂言は全て100パーセントの説明を演者が観客に示すのではない。古典芸能は演者だけで成り立っているのではなく、観客とのコラボレーションで形作られている。演者から発信されたものを観る者が想像力を使って豊に作品を仕上げていく。余韻をいかに楽しむか、自分なりの楽しみ方を「まんがで楽しむ狂言ベスト七十番」は豊に広げてくれるだろう。
もし日本で古典芸能がなくなってしまったら、想像力が乏しくなり、日本人の思いやりとか奥ゆかしさが消えていくのと同じ事のような気がする。平成の時代にも能狂言などに触れ、心を豊かにする必要があるのだと思う。
古典はわからなくてつまらないと思っている方このマンガを読んだらまんがの元になっている狂言が気になるはずだ。まんがでは満足できない。物足りない。結局狂言が何なのかわからない。だから実際に狂言を観て確かめたくなる。狂言師の声、所作の美しさ、無駄の無いまっすぐな空間。想像力を駆使して、心豊に現代でも通じる笑いに心を和ませてることができる日本の良き古典芸能に触れる機会を作る役割を担っている本であると思う。
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まず、最初に村尚也氏の「狂言は善性へ立ち戻る」は、なかなか秀逸で、読ませる文章でした。狂言を見たことがない、しかし興味はあるけど、敷居が高い、そんな事を思っている人は多いのではないでしょうか。バブルが崩壊し、だんだんと左前になっていく日本、追い打ちをかけるように大震災と、原発事故による放射線問題、さらには世界の金融崩壊と、明るいニュースがない昨今、日本人としてのルーツを探り、過去に立ち返る動きで救われる思いがするのは自然の流れだと思います。厳しい乱世で、つかの間の楽しみとして、能狂言はその昔に存在したのではないでしょうか。また、途絶えず伝承されてきたのも、それぞれの時代の国の危機の中で意義を見出して、その時代の国民が楽しんだものと思われます。基本的に人間の習性と言うのは昔も今も変わらないもので、特に狂言は辛いことを笑いに変えてきた芸術だと言えるでしょう。善性に立ち返る、、これはとりもなおさず、人に対して最大の喜び、許されるという意義を与えるものだと思います。まあ、そんな思いが広がるような文章でした。楽しく拝見いたしました。
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さて、本文の漫画の方ですが、過去に見たことのある狂言のものは、どうも食い足りないというか、くだけ過ぎの感があり、冒頭の紹介分の字が小さく、この部分にイラストもないので読み飛ばしてしまいがちです。まだ見たことのない番組の導入としては良いと思われますが、導入部分に最後に小さなイラストがあればさらに読みやすいと思います。それにしても、短い漫画でこれだけの内容を網羅するのはかなりの知識を必要とするでしょうし、狂言に対して造詣が深いものと思われます。七十番もよく描き切ったなあと感心似たします。最後の、覚えておこう!狂言の言葉、意外と知らないものもありました。知らなくても楽しめるということでもありますが、具体的な用例も添えていただくといちだんと分かりやすいと思われます。
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能楽堂に足を運び、渡された番組を見ると、「お能」「狂言」と演者名が記載されています。
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ただ、狂言のシテとアドって、正直、この本を読むまで解ったふりで、太郎冠者と主人と思ってました。
この本を読んでやっと、その時々で人物が変わること、「覚えておこう!狂言のことば」で果報者が金持ちなのだと知りました。
お能を観るときは、事前に予習をして、背筋を伸ばして神聖な気持ちで舞台を見ていたので、狂言は訳もなく笑えてホッとできる時間でした。
その予習もなく笑える「なぞ」を、この本を読むまで知らなかったのは、本当に私にとって笑える話です。
どこから読んでも面白いけど、一番マンガらしさが出ていたのが「二人袴」です。
婿入りの儀礼に、過保護の親がついて行き、一つの袴を親子で着回す様子が、よく描かれていて大笑いしました。舞台では、大蔵流だと袴の取り合いで本当に破けてしまいエプロン状態の袴で、親子が舅に会い、一緒に前向きに舞をするさまが可笑しくてたまりません。その様が、本当に舞台を観るかのごとく表現されていて漫画のプロも凄いと関心しました。
ただ面白いだけでなく、この本は初心者から、かなり舞台にのめり込んだ人にもお勧めできる本です。
その訳は、作者の言葉より引用~「狂言は笑いばかりでなく、悲しみや怒りもありますが、全てそれらは善き処へ戻っていきます。その意味で、狂言とは狂った言葉を使って、狂った世界を善き処へ立ち戻らせる力を秘めた芸能なのかもしれません。」という作者の気持ちが表れているからだと思います。
伝統芸能を受け、素直に楽しむ心も「絆」の一つではないでしょうか。
次回作には、「六地蔵」「通円」を期待しています。
最後に、日本人の「おもてなしの心」を形にした「まんがで楽しむ狂言ベスト70番」を新年始めの本としてお読みいただくと嬉しいです。
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