商品詳細

改訂新版 能のふるさと散歩 京都・奈良編

著者/出演者 岩田アキラ(写真・文)
出版 檜書店
判型 A5判
ページ数 215ページ
在庫 有り
価格 2,860円(本体2,600円 + 消費税260円)

物販商品

商品説明

☆能のふるさとを巡る旅に出かけてみませんか☆

能のふるさと(謡蹟)を紹介した人気ガイドブック『能のふるさと散歩』(2006年・NHK出版会)の改訂新版。

京都・奈良を舞台にした能の曲をとりあげ、能のストーリーと役柄、その舞台の特徴や見方を、能楽カメラマンとして長年にわたり見つめてきた著者ならではの視点で紹介する。
カメラを携えて所縁の地を訪ねて逸話や伝説を織り交ぜながら、能と登場人物、その地の魅力を旅人の目線で語り掛ける。

改訂にあたり新しい写真を加えたほか、地図や図版を見直し地名、駅名などを更新してより使いやすくまとめた。

旅のガイドブックであり、能の解説、入門書としても役立つ一冊。


●序文:観世銕之丞師(観世流)
●能の基礎知識:辰巳満次郎師(宝生流)

レビュー

超高速!能楽聖地巡礼 京都・奈良~『改訂新版 能のふるさと散歩 京都・奈良編』を読む

伝統を重んじる能楽界にあって、何ともぶっ飛んだ本が出たものだ!

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手にして最初に感じた事は、そんな衝撃だった。何故って…能楽に関する一般向けの日本語の図書で、今までに<横書き>があったろうか?まさにこの本は、中身がすべて横書きなのだ。こんな本は初めて!

あでやかな《二人静》の表紙に導かれて本を手に取ると、ほぼ200ページの本文に紹介されているのが62曲。何とコンパクトな!と驚きつつページを繰ると、掲載順が何とも斬新なのだ。すべての曲は<京都―左京区><京都―東山区・山科区><奈良>のように地域別にまとめられ、曲にゆかりの<聖地>を記した地図も添えられている。

著者の岩田アキラ氏の、無駄を排してなお瑞々しさに満ちた本文と、氏が撮影した多くの<聖地>写真は、読む者を一気に能の世界へ導く。驚くべきは岩田氏の目配りの徹底ぶり。

例えば《熊野》。<ロンギ>の《河原おもてを過ぎゆけば…》で始まる清水寺までの<聖地>の連なりをイラストマップで示す。加えて、写真の1枚は突然静岡県磐田市に飛ぶ。満開の長藤に彩られた、熊野御前とその母の墓所が置かれた行興寺を、確かに収めているのだ。

また《車僧》。これは雪の嵯峨野で、牛がいないのに動く不思議な車に乗った僧と大天狗が法力合戦を繰り広げるメルヘンチックな曲。車僧の法力に恐れをなした大天狗は、やがて雪の野に消え去る。何処かつかみどころがないこの曲に向き合って、岩田氏は<車僧御影堂>の存在を知る。太秦辺りを散々訪ね歩くが見つからず、右京区役所にまで尋ねて…ついに畑の中の小さな御影堂に辿り着く。

こんな心に残る<巡礼>の記録には勿論、各曲のあらすじや作者、能柄、登場人物が紹介されている他に、<聖地>へのアクセス、あるいは問い合わせ先まで記されている。何と、親切で豊かな本だろう!何と、力強く疾走感に満ちた本だろう!

この本の<はしがき>を記した観世鐵之丞師は、そのタイトルを<月日は百代の過客…>とした。この松尾芭蕉の《奥の細道》の冒頭の一文に続いて、やみがたい奥州の旅への思いが綴られて行く。時間の旅人である私たちもまた、この<聖地巡礼>の記に触れて、やみ難い旅心が頭をもたげる。

だが今は、コロナ禍という時代の大きな変革の時。今しばしはこの、時のうねりに沈潜していよう。芭蕉のように<三里に灸>据えて、充分に心身を充実させて、新たな旅に備えよう。やがて時が至れば、それこそ私たち一人一人の<能楽聖地巡礼>が始まる。旅はやはり、ひとりが良い。ひたすら歩いて、目指す<聖地>へ。その<聖地>が生み出した物語と、自分自身にしかと向き合いながら…。

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(阿部 未知世 様)
『改訂新版 能のふるさと散歩 京都・奈良編』感想

京都も奈良もだれもが知る観光地である。あまたの観光案内書を見比べれば、そこはあたかもテーマパークであるかのような印象さえ受けだろう。しかし、能のゆかりの地は、必ずしも有名な観光地ばかりとは限らない。

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能は、小さな舞台の中に壮大な風景を見せてくれる。とくに夢幻能において、それはあくまで虚構の風景として我々の想念のうちに立ち現れてくる。ところが、その風景はけっして虚構ではなく、かつては現実に存在したものであり、それが観光名所とは関係なく京都・奈良に偏在している。本書は、そのような物語の虚構であるはずの場所へといざなってくれる案内書である。

能を仲立ちにすれば、テーマパークとして目に映る風景が、まるで別のものに見えてくる。そこには物語の多彩な人物たちが生き生きと躍動し始めるからだ。

たとえば、本書には『熊野』の花見への道筋が実際の地図で示されている。もしその通りに京の街を歩くなら、まちがいなく熊野の悲哀が迫ってくるであろう。また、確実に架空の女性であるはずの夕顔の「墳」が五条あたりに実際にあるのには驚いた。

物語や歌の世界(それはまさに夢と幻の世界)が、本書によってもうひとつの現実として作り上げられている。どのページを開いてみても、現実と物語の虚構とが混じり合う、新たな現実の世界に我々の心を運んでくれるのである。

夢幻能とは、世阿弥を始めとする能作家が作り出したフィクションではなく、京都や奈良にいまだ息づく魂を記述したノンフィクションなのではないか。能に現れる魅惑的な登場人物たち、彼らに会おうと思えば、本書をたずさえて京都や奈良に行けばよい。

テーマパークだと思っていた観光地は、本書によって夢幻能そのものになるだろう。きっと訪ねるところのあちこちに、花はいくらでも立ち現れるにちがいない。

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(北口 裕史 様)
『改訂新版 能のふるさと散歩 京都・奈良編』の感想

初学者にとっては、美しい舞台写真と筆者が訪ねた能のふるさとの現在の様子(写真)が、能のものがたりの簡潔な解説、巻末の「能の基礎知識」とともに、いっそう能への興味・関心を引き立てるものである。能をよく知る者にとっても、しばし過去の観能の瞬間、シテの舞が、囃子の調べが、眼前に生き生きと甦ってくる、時を越えた不思議な感覚を惹起させる一冊である。

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能は原典となる古典の物語を忠実に再現したものではない。そこには作り手の解釈、意図がある。そして、演者と観客がその舞台での真剣勝負の出会いを通して各々の物語を新たに紡ぎ出していくものである。能の背景を知ることで、600年以上の時を経てもなお残り続ける情念の存在を身近に感じることができるであろう。その時のその思いは、決して消え去ることはなくその場に留まり、また、新たな人の情念と出会うことをずっと待っているのだろう。

本書153~154ページに筆者が撮影した「阿古父尉」の写真がある。撮影時のエピソードも相俟って、不遇の一生を終えた観世元雅の情念が今も宿り続けるこの面(おもて)の見る者の心を射貫く力が写し撮られている。

筆者が訪ね歩いたさまざまな能のふるさとでの、そこに住まう人々との何気ない会話も秀逸である。

例えば109ページの「車僧」の御影堂を探してくれた区役所の人。かつての名刹が今では地元の人にも忘れ去られていること、またひっそりと信仰が続けられていること。今も人知れず生き続けている能の世界を垣間見ることができた。

私ごとになるが、かつての職場近くにあった寂れた広場が「井筒」の在原寺であったこと、普段見慣れた金札宮が「金札」の故地であること、この本が過去の能の世界と現在の生活を繋げてくれる貴重な契機となった。

本書には地図やアクセス情報も完備されているので、外出自粛の禁が解かれたなら、まずは近場の京都、奈良の能のふるさと(「謡蹟」)から、ふらりと訪ね歩きたいと切に願う。

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(新町 後見 様)

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